建設業の業種について~3~(とび・土工工事業)
2017.07.12更新
今回は「とび・土工工事業」についてです。「とび・土工・コンクリート工事業」とも呼ばれ、「コンクリート工事」も含まれるため範囲が幅広いことが特徴です。その分、他の工事との境界があいまいなので注意が必要な業種です。
「とび・土工・コンクリート工事業」とは?
工事の内容として下記5種類に分類されます。
- 1. 足場の組立て、機械器具・建設資材等の重量物の運搬配置、鉄骨等の組立て
- 2. くい打ち、くい抜き及び場所打ちぐいを行う工事
- 3. 土砂等の掘削、盛上げ、締固め等を行う工事
- 4. コンクリートにより工作物を築造する工事
- 5. その他基礎的ないしは準備的工事
比較的イメージしやすいかなと思います。 では上記に並べた工事の具体例をみてみましょう。
1. 足場の組立て、機械器具・建設資材等の重量物の運搬配置、鉄骨等の組立て
とび工事、ひき工事、足場等仮設工事、重量物の揚重運搬配置工事、鉄骨組立て工事、コンクリートブロック据付け工事
余談ですが職人の方々が着ている、ダボダボに膨らんでいるズボンは危なくないのか?特に高所で神技を披露する「とび職人」の方のファッションに危険を感じたことのある方もいらっしゃるかと思いますが、実は機能性を重視したデザインのようです。「足をあげたり膝曲げたりする際、邪魔にならないため」というのが一番の理由だそうです。あとは猫のヒゲと同じように危機感知センサーのような機能もあるとか。すごいですね!
「ひき工事」とか「重量物の揚重運搬配置工事」についてはあまりなじみのないと思いますので用語説明から入ります。
用語解説その1
◇ ひき工事
曳き工事とは、住宅や建物、構造物を移動する工事の事を言います。土地の区画整理や、敷地有効利用の為などで幅広く行われています。
◇ 重量物の揚重運搬配置工事
現場では「荷揚げ屋さん」と呼ばれています。 「荷揚げ屋」とは建設現場における、重量物の搬出入、移動を請け負う作業員の名称で揚重工と言われることもあります。 壁や天井を造るための石膏ボードやステンレスやアルミの軽量材などの内装資材の搬入移動などを行います。
2. くい打ち、くい抜き及び場所打ちぐいを行う工事
くい工事、くい打ち工事、くい抜き工事、場所打ぐい工事
基礎工事の一つで、地盤が軟弱な場合に建物の荷重を地盤が支持できるように杭を打ち込む工事のことをいいます。
3. 土砂等の掘削、盛上げ、締固め等を行う工事
土工事、掘削工事、根切り工事、発破工事、盛土工事
土関係の工事で、掘ったり、盛ったりする工事です。火薬を使う発破工事も含まれます。※「根切り」とは構造物をつくるために地面を掘り下げて所要の空間をつくることです。
4. コンクリートにより工作物を築造する工事
コンクリート工事、コンクリート打設工事、コンクリート圧送工事、プレストレストコンクリート工事
こちらはコンクリート関係の工事です。コンクリート打設工事、コンクリート圧送工事、プレストレストコンクリート工事について用語解説をします。
用語解説その2
◇ コンクリート打設工事
コンクリート打設工事とは建築の基礎となるコンクリートを、枠の中に流しこむ工事のことをいいます。 現場では「コンクリ打ち」といいます。 「打設」という言葉は、生コンクリートを高密度に充填するため、竹の棒などで突いたり叩いたりして空気や水を追い出していたため、このような名前になったようです。
◇ コンクリート圧送工事
コンクリート運搬車で建設現場に搬送された生コンクリートを、コンクリートポンプ車を使用して、油圧により所定の型枠内に生コンクリートを圧送(あっそう)し打込む工事をいいます。
◇ プレストレストコンクリート工事
橋梁や高速道路など大空間建設物を造るのに適している「プレストレスト・コンクリート(PC)」を使う工事のことをいいます。 PCは「コンクリートの弱点を補ったコンクリ」という認識でOKです。
「プレストレストコンクリート工事」のうち、「橋梁等の土木工作物を総合的に建設するプレストレストコンクリート構造物工事」は『土木一式工事』に該当するので要注意です。
5. その他基礎的ないしは準備的工事
地すべり防止工事、地盤改良工事、ボーリンググラウト工事、土留め工事、仮締切り工事、吹付け工事、法面保護工事、道路付属物設置工事、屋外広告物設置工事、捨石工事、外構工事、はつり工事、切断穿孔工事、アンカー工事、あと施工アンカー工事、潜水工事
この中からいくつか用語解説します。
用語解説その3
◇ 地盤改良工事
地盤改良工事とは建築物を建てる際、安定性を保つため地盤に人工的な改良を加えるための工事のこと。 薬液注入工事(シロあり退治等)、ウエルポイント工事等各種の地盤改良を行う工事の総称です。
◇ 法面保護工事
法面(のりめん)工事とは、法面がくずれないように法枠等を設置して落石予防、保護するための工事を言います。
◇ 道路付属物設置工事
こちらは道路標識やガードレールの設置工事も含まれます。
さて次は専門工事との境界を見ていきましょう。
他の専門工事との境界
ここは国土交通省のガイドラインがわかりやすので抜粋します。
『とび・土工・コンクリート工事』における「コンクリートブロック据付け工事」並びに『石工事』及び『タイル・れんが・ブロツク工事』における「コンクリートブロック積み(張り)工事」間の区分の考え方は以下のとおりである。
- 根固めブロック、消波ブロックの据付け等土木工事において規模の大きいコンクリートブロックの据付けを行う工事、プレキャストコンクリートの柱、梁等の部材の設置工事等が『とび・土工・コンクリート工事』における「コンクリートブロック据付け工事」である。
- 建築物の内外装として擬石等をはり付ける工事や法面処理、又は擁壁としてコンクリートブロックを積み、又ははり付ける工事等が『石工事』における「コンクリートブロック積み(張り)工事」である。
- コンクリートブロックにより建築物を建設する工事等が『タイル・れんが・ブロツク工事』における「コンクリートブロック積み(張り)工事」であり、エクステリア工事としてこれを行う場合を含む。
- 『とび・土工・コンクリート工事』における「鉄骨組立工事」と『鋼構造物工事』における「鉄骨工事」との区分の考え方は、鉄骨の製作、加工から組立てまでを一貫して請け負うのが『鋼構造物工事』における「鉄骨工事」であり、既に加工された鉄骨を現場で組立てることのみを請け負うのが『とび・土工・コンクリート工事』における「鉄骨組立工事」である。
- 『とび・土工・コンクリート工事』における「屋外広告物設置工事」と『鋼構造物工事』における「屋外広告工事」との区分の考え方は、現場で屋外広告物の製作、加工から設置までを一貫して請け負うのが『鋼構造物工事』における「屋外広告工事」であり、それ以外の工事が『とび・土工・コンクリート工事』における「屋外広告物設置工事」である。
- トンネル防水工事等の土木系の防水工事は『防水工事』ではなく『とび・土工・コンクリート工事』に該当し、いわゆる建築系の防水工事は『防水工事』に該当する。
資格のお話し(とび・土工工事業編)
以下の資格を持っていれば、建設業許可(一般)におけるとび・土工工事業の専任技術者になることができます。
- 1級建設機械施工技士
- 2級建設機械施工技士(第一種から第六種)
- 1級土木施工管理技士
- 2級土木施工管理技士(土木)または(薬液注入)
- 1級建築施工管理技士
- 2級建築施工管理技士(躯体)
- 技術士:建設・総合技術監理(建設)
- 技術士:建設「鋼構造及びコンクリート」・総合技術監理(建設「鋼構造物及びコンクリート」)
- 技術士:農業「農業土木」・総合技術監理(農業「農業土木」)
- 技術士:水産「水産土木」・総合技術監理(水産「水産土木」)
- 技術士:森林「森林土木」・総合技術監理(森林「森林土木」)
- 技能検定の1級『とび、とび工、型枠施工、コンクリート圧送施工、ウェルポイント施工』のどちらか
- 技能検定の2級『とび、とび工、型枠施工、コンクリート圧送施工、ウェルポイント施工』のどちらか+合格後3年間の実務経験が必要です。
- 地すべり防止工事+合格後1年間の実務経験が必要です。
この業種は専任技術者要件の対象資格が多いことが魅力ですね!
それでは次回に続きます。